<年俸制とは?>
近年、年俸制という賃金制度を採用する企業が増えています。年俸制とは、給料を年を単位
として支払うというものですが、実際の支払いは毎月支払うということで(毎月支払いの原則)、 その辺は月給制と変わりません。
内容的には、成果のみで賃金が決まる完全年棒制もありますが、多くは年功や職能給との
組み合わせで額を決めるようです。
算定基礎期間は1年間で、業績・能力が重視されます。定期昇給なく、減額があります。
通常は、年棒の総額を12で割ったものが、月毎に支給されます。が、総額を17で割って、
年2回のボーナス月に、2か月分・3か月分を支給するなどという場合もあります。また、ボーナ スについては、この年棒とは別に支給される場合もあります。これらは、それぞれの会社によ って様々です。
当然、労働基準法の賃金規定の適用があります。
<就業規則における年俸の規定>
年棒制を導入するには、就業規則の変更が必要となります。その際は、賃金の決定、計
算、支払方法などを明記しなければなりません。それらが労働基準法(92条、93条)より低い 基準の場合は、その部分は無効となります。
<年俸制と残業>
さて、年俸制を採用する企業は、その理由を「残業代を支払わなくて済むから」としているとこ
ろが意外と多いですね。しかし、これはれっきとした労働基準法違反。年俸制だからといって、 残業代を払わないことは、大きな間違いなのです。
というのは、会社は年俸制にしても、労働基準法37条の割増賃金(残業代)を支払う義務が
あるのです。 残業代を支払わなてもよいとされるのは、管理監督者(経営者と一体の立場に ある者)に対してのみです(労働基準法41条)。
つまり一般社員に対しては、残業代を支払わなければならないということです。仮に、会社が
「残業代は支給しない」という内部規定を作ったとしても、その規定は無効です。これに違反し た企業には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
この点を勘違いしている人事担当者が多くいます。その結果、労働者もその言い分を鵜呑み
にして、残業代を一切貰っていないというケースが数多く存在するようです。
年俸制で残業代を貰っていない人は、今すぐ会社に訴えて、改善してもらいましょう。
<年俸制の残業計算>
年を単位とした年俸制の総額に、残業代を含めて計算し支給する場合は違法ではないとさ
れています(平成12年基収78号)。
しかし、残業代は法律で定める割増(時間外25%以上、深夜25%以上など)が必要です。
それより少ない場合は、差額を毎月の賃金の中で調整して、支払わねばなりません。
さて、年俸制の金額に一定時間の残業代を含めるという規定があっても、それ以上の時間を
働いていると考えられる場合はどうするか。
まず、年俸の総額を1年間の総労働時間で割って、1時間あたりの賃金を出します。その金
額に法定残業を足して本来貰うべき金額を算出します。それが、支給された金額より低い場合 は、会社に請求することができます。
※こういう時代ですから、会社もあの手この手で賃金の削減を求めてきます。しかし、労働基
準法の「最低基準」に反することに対しては、断固とした態度で臨みましょう。
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